第22回「高校生のためのオープンスクールin南相馬」レポート(3月24日開催)

  • 高校生
  • 2016.3.24 Thu
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震災から5年が経過した相双地域がどうなっているのか、自分の目で見ること。

毎月郡山で開催している「高校生のためのオープンスクール」。春休みに入った3月の回は、場所を移して相双地域のフィールドワークを行いました。中通り・浜通り・会津と3つの地域にわかれている東西に広い福島県。津波や原子力事故の影響を最も受けた浜通りの状況は、同じ県内にいても住んでいる地域が異なると、なかなか実感が湧きにくいかもしれません。震災から5年を迎えた3月のスクールは、18名の高校生が参加しました。
中通り・会津から参加した高校生は郡山駅前からバスに乗り込み、磐越道を経由して常磐道の広野インターで下車。南相馬から参加の高校生たちとはここで合流し、「Jヴィレッジ」の様子を車中から眺めました。Jヴィレッジは、あすびと福島・代表の半谷が東京電力時代に新規事業として立ち上げ、運営にも関わった思い出深い場所でもあります。サッカー日本代表の強化合宿なども行われたこの地は、現在、福島第一の廃炉作業に関わる作業員の皆さんが作業前後にここに集まり、自家用車を駐車して、本日の作業工程などを確認して班ごとに分かれてバスで現場に向かうための拠点となっています。

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震災直後は、福島第一の作業に従事する方が作業服に着替えたり、スクリーニング調査を行っていましたが、現在その機能はすべて福島第一の現場に移っています。
日本サッカー協会は、2020年の東京オリンピックに向けて、2019年には再びここを日本代表の合宿地として使用する方針を固めており、外壁の修繕にも着手しはじめているほか、今後は全天候型グラウンドや、新たなホテル棟も備えて復活することを目指しているそうです。作業に向かう皆さんに心から敬意を表し、日本代表がこの地を踏むことに期待を膨らませ、次の目的地に向かいます。
その道中、国道6号線を北上するバスの車窓の向こうには、おびただしい数の除染土が広がり、わずか数キロ先に見える福島第一の集中排気塔と廃炉作業をするためのタワークレーン、そして東京方面へとつながっていく送電鉄塔。人の生活の匂いが感じられない「20km圏内」が置かれた状況を、改めて考えさせられる風景が続きます。
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 時が止まった風景、進んだ風景がそこに。富岡駅前。

常磐線の富岡駅は、ほんの数か月前までは津波の被害を受けた駅舎がそのままに残されていましたが、今は線路の存在に気づいてようやく駅舎があったとわかるような状態です。がれきの処理を丁寧に終え、修復(もしくは保存)の準備を進めているような印象の家屋もがある一方で、被害を受けたであろう駅前の商店や家屋は、いくつかがそのままに残されていました。これらもじきに解体されていくことを想像しながら、その様子を目に焼き付けます。
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 福島に向き合うために、見た光景を内省し、言語化する。

南相馬ソーラー・アグリパークに到着し、楽しいランチの後は、午前中に目の当たりにした現実を受けとめ、ゆっくり内省します。
復興が明らかに遅れているという感じ方、一方で1年前より進んでいると感じ方、それぞれの意見が交わされましたが、Jヴィレッジでのたくさんの作業員の方を見て、こんなに福島のために行動している人がいることを心強く思った、「福島=可哀想」というイメージから脱却したい、という感想が述べられました。
一方で、南相馬市内の高校生からは、この事実が過去になってしまう今後、それを次世代にをどう伝えるかということについて問題意識を持ったようです。また、やはり中通りの人から見れば、この風景が不思議に映っており、同じ県内でも、震災被害に対する認識の溝を埋める必要性についても意見が出されました。
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震災後走り続けてきた、あすびと福島・半谷の5年間からケーススタディ。

そして、現状に対して自分たちの気持ちを言語化した後、半谷のファシリテートによって、半谷をはじめとするあすびと福島が歩んだ5年間をケーススタディの素材としました。
まず、「震災後、皆が半谷の立場だったら何をするか、考えてみよう」という正解がない問いに、被災状況を踏まえて、「自分だったらどうするか」を深めました。
高校生たちからは、風評被害を打ち消すための発信をする、ツアーを企画する、などたくさんの意見が出ましたが、半谷自身は震災直後は「東京から支援物資を届ける」という支援をしたのでした。一方で、モノの支援の目途が経ったところで、「仕組みとしての支援」を考える必要性が求められてきます。実際に半谷自身も、地元の大人から「子供たちのために何か考えて!」と託されたのでした。
「では、その仕組みはどんな仕組みにはどんなものがあるだろう」と問いかけます。

自分がしてほしかったことを振り返ると、避難所で勉強するスペースを確保してほしかった。外で遊べなかったので体を動かす機会がほしかった。避難した人に対してコミュニティ作りの仕組みを考えるべき、などと意見が出ましたが、それに対し、半谷は強い言葉で伝えます。

「新しいことをやる時、その「やる人」そのものが一番大事。「自分がやる」と行動できる人材を育成したいと思った。」
半谷があすびと福島として人材育成に取り組むにあたり、知識ではなく体験から人は学ぶと考えいたのでした。それこそが「自ら考えて行動する力」であり、この力を持てばどんな境遇にいても、どんな壁があっても、当事者意識を持って自分の人生をきらきらと輝かせることができると確信したのです。
これが目的であり、南相馬ソーラー・アグリパークという場は、誰もが賛同する自然エネルギーの体験ができる手段としての舞台だと伝えました。

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このスクールで半谷が繰り返し伝えてきたことですが、今回のスクールでは、被災の様子を現場で体感し、さらに震災以降の半谷のケーススタディによって、「社会は何を求めていて、何が価値なのかを常に意識すること」の大切さを高校生に伝えました。
大人になっても混同しがちな「目的と手段」。若い時代から、この視点を自分の中で常に意識して、目的と手段を徹底的に分けて考えることは、今の学校の勉強がどう役に立つか、何のために勉強をしているのかをしっかりと認識しながら前進することに役立つはずです。
早朝から夕方まで、長いフィールドワークになりましたが、この日の原体験が、少しでも彼らの将来に活かされることを願っています。

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