”あすびと”へ向かって前進する西村亮哉くん

  • “あすびと”たち
  • 2016.4.15 Fri
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”あすびと”へ向かって前進する西村亮哉くん

福島県郡山市の県立安積高校を卒業した西村亮哉くん。

「高校生のためのオープンスクール」を立ち上げ期から盛り上げ続けてくれた彼が、卒業を期に後輩たちに向けて、自身の志とその志を形にするまでの道のりを、想いのこもったメッセージで共有してくれました。

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中学生の時から高校に入るまで、僕の夢はオーケストラの指揮者になることだった。でも高校に入って、いざ音大を目指すとなった時、訪ねたピアノの先生に言われた言葉でこの夢を考え直すことになった。

 

「君がやりたいことは本当に音楽だけ?」

 

心に抱えてはいたけどなんとなくごまかしていた、そんなモヤモヤを見事に指摘されてしまった。

 

指揮者になるには音楽を専門に学ぶ音楽大学に行かなければいけない。もちろん他のことがすべてできなくなるわけではないけれど、他の分野にも興味があり、まだまだ自分が何をやりたいのかがはっきりしていなかった僕には音大を本気で目指す決断はできなかった。

 

 

「自分が本当にやりたいことが分からない」そんな不安を抱えていた時、半谷さんと出会った。2014年5月の第1回「高校生のためのオープンスクール」の時だった。

 

スクールは僕にとって新鮮な場所だった。今まで目を向けたことがなかった分野の、たくさんの「かっこいい大人」に出会うきっかけをもらった。ビジネスを手段として社会問題を解決する「社会起業家」の存在もこの場所で知った。

 

今までは「お金をもらう」という仕組みも、その意味についてもどこかモヤモヤを抱えていたけれど、社会起業の考え方を通して、その仕組みはとてもシンプルなのだと知った。

 

「誰かが”ありがとう”と言ってくれるようなことをする(ものを作る)。その対価としてお金をもらう。そして、そのお金をもとに、また誰かの役に立てること、自分のやりたいことを続けていく。」

 

お金をもらうことはあくまで、自分のやりたいこと、やるべきことに継続性を持たせるための手段でしかないと知ることができた。

 

 

考え方は分かった。でも自分はどんな社会問題に関心があるのだろう。教育、貧困、一次産業、復興など、解決すべき問題は数えきれないほどある。もちろん、どの問題の解決も重要だ。でも、どの問題の解決に対しても、自分がやりたいことなのか、自分がやる意味はなんだろうか、という疑問が湧いて「人生をかけて取り組む仕事」にする決心はとてもできなかった。

 

その一方で、周囲には学生団体を立ち上げて「自分のやりたいこと」に向かって活動したり、夢に向かって既に準備を始めたりしている同級生たちが沢山いた。自分はやりたいことがまだわからない、夢がまだ見つかっていない。それがコンプレックスで、取り残されて行くような気持ちだった。

オープンスクールは、たんに「社会問題の解決方法を学ぶこと」をテーマとした場所ではなかった。スクールで学んだ一番大切なことは、「自分が本当にやりたいことを見つけること」だった。この時期から自分が楽しいと感じることや、ワクワクする瞬間を志のスタート地点にすれば自然と進む道は見えてくるということが考え方の軸になっていった。

 

そうして考えると、自分はやはり音楽がやりたいのではないかと思い始めた。自分が作った音楽を誰かが聞いてくれて、拍手が響く瞬間。そこで自分と聞き手の間で「何か」がつながる瞬間。それが自分のいちばん好きな瞬間で、一番ワクワクする瞬間だと思った。今更、音楽で生きていきたいなんて言えないと思っていたけど、半谷さんのスクールで教えてもらったことが腑に落ちると、素直に音楽と向き合うことができた。

 

音楽をやることは「目的」であると同時に、一つの「手段」だとも考えている。もちろん音楽自体を楽しむこともしたいけれど、音楽を通して誰かが救われるような沢山のきっかけを作っていきたい。いくら「音楽をやりたい」と願っても、誰かのためにならない音楽なら、もちろんお金はもらえないし、僕も幸せじゃないと思う。「社会問題の解決に経済的持続性を持たせる」などの社会起業の考え方はこれから音楽をやっていく上でも僕に沢山のヒントをくれると思う。

 

だから、僕は社会起業家になるつもりはない。でも、音楽だけをひたすら極めるのではなく、社会起業的な考え方を持ちながら、分野に縛られない活動をしていきたい。

 

「別に社会問題にも、起業にも興味がない」 という人もいると思う。でも、社会起業という視点を一つ自分の中に持つことは、分野に関係なく、自分が一生をかけてやり続けたいことを見つけるヒントをくれるのではないかと思う。

 

 

やりたいことが見つかっても、受験勉強が本格的に始まり、僕は音楽に打ち込むことができなくなった。現役で志望する大学に合格することができなかったから、今僕は東京の予備校で勉強をしている。でも、やりたいことができないことより、やりたいことが見つからない方がよっぽど辛くて怖かった。

 

 

音楽をやっていきたいと決めた今、どんなことであっても無駄な経験はないと感じることができている。今年は全力で遠回りしてまた音楽に戻ってきたい。

 

 

最後に、スクールで毎回掲げられる「憧れの連鎖」という言葉について。

 

この言葉は大好きな言葉であるし、僕も憧れの連鎖の一端を担うような人になりたいと思っている。でも、誰かに対してどんなに強い憧れを持ったとしても、僕は決して「その人」になることはできない。

 

僕の経験は僕だけのものだから、僕は僕にしかなれない。だから沢山のかっこいい大人達に憧れながらも、誰かになろうとするのではなく、もっともっと「自分になる」ことを意識して生きていきたい。

 

 

 

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