「あすびと福島と住友商事」
あすびと福島は、東日本大震災と原子力発電所の事故で被災した福島県南相馬市の現地で企業研修を行い、各社の社員の皆さんはリーダーシップや新たな価値づくりについて学びを深めています。この1泊2日の研修は、2014年に始まり、これまでに4,200名を超える社会人の皆さんが参加しました。
今、コロナとの共存へのプロセスが長期化する中、あすびと福島は、コロナの収束時には現地で、第2波・第3波時にはオンラインで研修ができる態勢を整えました。
住友商事さんをはじめ数社に、このオンライン研修を真っ先に採用いただきました。
住友商事さんは、2017年から毎年、南相馬での研修にお越しいただいており、その参加者を対象に今回のオンライン研修への社内公募を行いました。
そして、5月19日(火)の13時から14時50分まで、事務局を含めて12名の皆さんとともにオンラインでのケーススタディが実現しました。
「ケースA・オフィス町内会」
今回使用したケースAは、あすびと福島の代表自身の経験を基にグロービス経営大学院と共同で制作した8ケースの内の1つ。代表が東京電力に勤務していた30歳代後半に、1990年当時として先例のなかった古紙共同回収事業を創設した志と「オフィス町内会」の取組を中心に、時には挫折した経験も描かれています。
参加の皆さんはケースAを事前に精読したうえで、オンライン研修当日、「オフィス町内会の事業成功の本質は何か。自分自身の業務に活かせるものは何か。」という問に対して、約2時間、①グループ対話、②個人発表・共有、③質問・対話を実施しました。あすびと福島の代表がファシリテーターを務めました。
「自分起点から社会課題の解決を目指す」
参加者の多くが、「志はソーシャル、仕組みはビジネス」という点に本質があると捉えました。「オフィス町内会」は、それまで手つかずだったオフィス古紙の共同回収による紙ゴミの減量化と環境への貢献という社会的な価値(ソーシャルな志)を、ゴミにするよりコストを低減して事業性を確保(ビジネスとして仕組み化)したわけですが、参加の皆さんは「ご自身の業務を通じた社会課題の解決」に改めて真剣に向き合いました。
このような皆さんに対して、ファシリテーターは語りかけました。
「社会課題には、社会起点ではなく、かえって自分起点で向き合ってほしい。自分がやりたいことの延長に社会課題の解決を見据えてほしい。なぜなら、社会課題の解決には何度も失敗が付きものだが、自分がやりたいことであれば決して諦めない。そして、目的をブラさずに手段を取り続ければ、必ず社会的価値を創出できる。」
「時には信用力を使う側に」
オフィス町内会の成功の要因には、当時の東京電力の”信用力”もあります。
「確かにオフィス町内会のアイディアはユニークだし、人一倍の努力をしたが、東電の信用力がなければ1,000以上の事業所の加入はなかった。」と、ファシリテーターは振り返ります。
そして、参加の皆さんにこんなエールを送りました。
「住友商事さんも世間から大きく信用されている企業です。その信用力は、経営幹部の方々はもとより、目の前の仕事を頑張っている皆さん自身が創っている。自分起点から社会起点に繋がる志が生まれたら、その実現に向かって自社の信用力を使う側に回っていただきたい。”社内起業家”としてのやりがいですね。」
やりたいことを見つけたら、信用力を使って実行に移す。参加の皆さんの背中を押すメッセージでした。
「非日常の定点観測で、感性を」
今回、参加の皆さんは、南相馬で体感した「非日常」を振り返るとともに、ファシリテーターとの対話の中で改めて「非日常」を体感しました。それは、社会課題を捉えるための感性を養う「非日常」の場であり、多忙を極める皆さんにとっての言わば「非日常を定点観測する場」でした。
ファシリテーターは最後に提案しました。
「住友商事さんが目指す『見たこともない世界』の実現には、”知性”を高めることに加えて、”感性”が不可欠ではなかろうか。南相馬での被災地研修やコロナに向き合う『非日常の体感・体験』を通じて、感性を養っていただきたい。」
昨年12月、住友商事さんは創立から100年を迎えました。そして今、新たな100年に向けて、今回のオンライン研修が少しでも参加の皆さんのお役に立てば幸いです。